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最上小国川ダムの問題点 (文責 草島進一 山形県議会議員)
このダム問題には、1つの隠された重大な真実と2つの欺瞞とがある。
一つの隠され続けてきた重大な真実とは、「河川管理者である県がつくった堰が、土砂を堆積させ、河床をあげ、水害をひきおこす原因となっている」ということ。
この堰はなんのためにつくられたのか。というと、温泉旅館の阿部旅館と三ノ丞旅館の2軒の温泉旅館の湯量を確保するためなのです。古くは、この旅館の岩風呂は、川の中にある露天風呂だったと古い写真にありました。それを囲って自分の旅館の温泉風呂にしたと推定されます。そして、この堰は、粗朶や、板を使って住民総出でつくられていました。それで水位を上げていた。と。そして自然物でつくられたその堰は、洪水の際には破壊され、それと同時にそこに溜まった土砂も一緒に流れていた。
ところが、その堰を県がコンクリートの堰にした。そのため、土砂が堆積し続けたということ。
この写真の右下にあるのが、昭和5年当時の堰。粗朶などを組んで川の水位をあげていた。町民総出で堰をつくる作業をしていた。水が出るたびに壊されていた。とのこと。
県は、この堰を「床止め」と言い、河床に土砂が溜まっていることを認めなかった。でも、この河川縦断図は県提出のものだが、左下のところで盛り上がっていることがわかる。
さらに下の図(これは国土研が、県の数値をインプットして作成したもの)では明確だ。
。
赤倉温泉の流域。不自然に土砂が堆積していることは、これまでここを訪れた河川工学者、今本博健 元京大防災研所長、大熊孝 新潟大名誉教授 桑原英夫 元山形大教授 国土研 中川学 氏らが、認めている。
「河川管理者である県が、旅館2軒のためにつくった堰により、土砂を堆積させ、この地域の治水安全度を低めている。」これは絶対におかしい!
3つの欺瞞とは、
1)穴あきダムなら、環境に影響は少ない。「穴あきダムなら、環境にやさしい」要は、「日本屈指の清流環境である小国川にも大丈夫だ!」 という欺瞞。
2)赤倉温泉街の河床掘削や河床の土砂除去などについて、温泉の湯脈に影響するから、一切触れない。という欺瞞。
3)そもそも、この地域、真に河川氾濫による水害が多発しているのか?という欺瞞。
である。
1)は、先例である益田川ダム(島根県)と辰巳ダム(石川県金沢市)を視察した。
益田川ダムが供用されて未だ、たった6年しかたっていない。それにこの2例のダムの上には更に大型のダムがあり、河川の環境は清流環境と呼べるものではない。益田川は、高津川流域にある製紙工場の廃液が流れる川で漁業権をもつ川ではないのだ。6年たって以下のようになっている。副ダムのところに、土砂とヘドロがたまっていた。これは明らかに富栄養化していないか。で、現地所長に確認すると「これは環境に配慮したダムとしてつくったものではない、効率的に土砂はけするようにつくったもんです」との事。で、このダムの供用前、後で鮎をはじめとする魚類の定性、定量調査は全くおこなわれていなかった。山形県は、卓上の、「石田力三氏の見解によれば、、、」と一部の専門家の推測のみで判断している状態だ。全く思慮に欠けている。これには「ここまでわかった鮎の話」などの著書で知られる高橋勇夫(たかはし河川環境研究所)先生が、反論している。「検討すべき点を全く検討していない」と。河川生態系を大幅に崩しかねないということだ。高橋勇夫先生のレポートはこの後、添付する。
要は、「日本屈指の小国川が、穴あきダムの実験台になろうとしている。」ということだ。
欺瞞その2)これは、実際に県の依頼を受けて温泉の調査をおこなった、山形大学川辺孝幸教授が真っ向から反論している。これは9月27日の映像をみてほしい。
欺瞞その3)
そもそも、この最上小国川の洪水による水害だが、これまで、死者は一人もいない。昭和49年8月の豪雨がほぼ最大の洪水だったと思われるが、その後、赤倉温泉の下流域は、ほぼ、50年に一回の水害に耐えうる巣治水対策が施されている。要は、赤倉温泉地域のみの治水が課題なのだ。
赤倉温泉地域だが、以下のような状況だ。護岸の上に旅館の建物がのっているのは普通。川に迫り出している旅館があり、護岸の状況はめちゃくちゃに近い。「川にどんどん迫り出して来ちゃったんだよね」と旅館主が語ってくれた。こういう状況なのだ。
それと、近年起きている「浸水被害」のほとんどが、「内水氾濫」というものなのだ。要するに、川があふれて被害を及ぼしているのではなく、裏の山とか裏の田んぼから来る水でそもそも低いところに立地している建物が浸水してしまっている。ということなのだ。毎度水がつく初音寿司さんは全くの内水氾濫被害。これは、ダムができたとしても問題解決しないのだ。
2012年10月25日 第一稿 アップします。更に付け加えます。