08/11/17 温泉影響調査に対する県知事会見発言への抗議と申し入れ。
2009.1.11 山形県から回答届く。
11月17におこなった斉藤知事の会見は、真実を歪曲した県民への情報操作である。
ほぼ2ヶ月もかかっておこなわれた回答でも、肝心な点について、全く応えていない。権力によって、真実が握りつぶされていると強く感じる。 最上小国川の真の治水を考える会 事務局長 草島進一
2008年 11月 17日
山形県知事 斎藤 弘 様
最上小国川の“真の治水”を考える会 代表 押切喜作
事務局長 草島進一
11月13日知事記者会見での「最上小国川ダム問題」への発言に対する申し入れ
知事が「最上小国川ダムに関し、11月13日、「河床掘削することは、源泉に対して著しい影響を与える恐れがあることから困難である」という発言について、以下、申し入れを行う。
1.今般の河床掘削に関する現地調査は、現地住民で構成される「最上小国川の“真の治水”を求める対策会議 が 今年6月におこなった申し入れの席で、土木部長が「掘削可能かどうかの調査をおこなう」と表明したことに起因するものである。しかし県は調査の際に協力した当事者である住民団体へ、内容の詳細などを全く説明することなく、県知事の会見に踏みきっている。
住民団体は憤慨している。ただちに「対策会議」、関係者に対して「県見解」の論拠とする一切の資料を公開し説明すること。
2.知事見解の「情報操作」について
「河床掘削」は「岩盤掘削」しかないように歪曲して、「困難」と結論づけた13日の知事発言は、真実を歪曲した県民への「情報操作」である。2007年度詳細にわたり現地調査した国土問題研究会の研究者は、「赤倉温泉流域には多量の砂礫が堆積している。河川水位を保つために固定堰を可動堰に改修し、堰上流の河床中央部にたまった砂礫を取り除くことで、流下能力を80トンから100トン程度増加させることができる、その際は、岩盤掘削の必要性はない。と提案している。現地に4度訪れ今回も踏査された元京大防災研究所、元淀川水系流域委員会の今本博健 氏も同様の見解を示している。
つまり温泉に影響することなく、砂礫撤去し流下能力を上げることが可能だということである。
これまでも県は、積算根拠を明確にしないまま、河川改修の方が、ダム建設よりも年数や費用がかかる。などと説明をしてきた。また、根拠なき「日本一環境にやさしい穴あきダム」と称したビラを流域住民に配布するなど、「ダム建設」を助長する情報操作をおこない続けてきた。
その上、更に今般の知事の歪曲発言、県民への「情報操作」に、私たちは徹底抗議する。
赤倉温泉流域の砂礫の堆積状況の詳細を示せ。又、固定堰を可動堰に替え、砂礫を除去した場合の洪水時の流下量を示すことを強く要求する。
3.今年9月11日に蒲島郁夫熊本県知事が、川辺川ダム建設を白紙撤回することを発表し、11月11日、滋賀、京都、大阪、三重の4府県の知事はダム建設に対し共同で計画中止を求めた。
嘉田由紀子・滋賀県知事は「今は国が決めた計画に従うだけの時代ではない。今回の合意は地方自治の試金石になる」と強調した。こうした表明の根本には、淀川水系流域委員会の方針があり、今般11月9日のシンポジウムで講演された今本博健 元京大防災研所長はその治水論の中心人物である。
今本氏は、いままでのダム計画にたよる治水のあり方は行き詰まっている。これからの「治水の使命は、いかなる大洪水に対しても住民の生命と財産を守ること」であり、効果が限定的なダム建設ではなく河川対応と流域対応を併用して洪水を流域全体で受け止める必要がある。と説いている。また、これまでダムができたことにより、自然環境が破壊されなかった河川はない。環境は、基盤であり、治水のためといえども環境に重大な影響を与えてはならない。として、「ダムに依らない治水」を訴えている。
最上小国川についても、穴あきダムができたら、環境への影響は避けられず、せっかくのこの川の清流の魅力が死んでしまう。治水安全上でも、財政的にも、持続可能な流域のためにも、効果が限定的なダムをつくる時代ではない。最上小国川の場合、流域委員会をはじめ、ダムに依らない治水の検討が全く足りなすぎる。と強く主張されている。知事が主張する「治水策をていねいに十分に検討してきた」もまた、真実と異なる県民に対する「情報操作」でしかないことは明らかである。
先般11月14日には、4府県の動きなどを受け、金子国土交通大臣が国交省の既存のダム計画は「見直す時期だと思っている」との表明もあった。
今、ダム建設や治水をめぐる状況が、大きく転換している。そうした状況下で、従来の「まずダム計画ありき」の旧来の国土交通省の姿勢に固執してダム建設を進めようとする山形県の姿勢は、その新たな潮流から逆行したものである。今、志ある知事らが県単位で河川の自治をとりもどし、住民は先進の知見から新しい治水の常識を学びつつあるのに、山形県の場合、知事は自治を放棄していると考える。
県知事は会見の席で「他の県とは事情が違う」と発言しているがその根拠を示せ。また、新たな“真の治水”の潮流に立脚した「ダムに依らない治水」策を再度議論し直す場の設置、又、河川整備計画のやり直しを要求する。
4.今年5月、「生物多様性基本法」が国会で可決成立した。2010年は国連の生物多様性年であり、国内でcop10がおこなわれる。その状況下で、自然環境の中の生物多様性を維持する責務を今まで以上に私たちは負っている。トウホクサンショウウオなどの貴重生物の他、流域の交流人口に貢献する天然鮎、サクラマス。また、最上川水系随一の清流環境は、この山形県が誇れる自然の財産、自然資本であると考える。
県は「生命と財産」を守るためにダムが必要というが、熊本県で白紙撤回された川辺川ダムも小国川ダム同様の穴あきダムであり、「穴あきダムであれば環境に影響がない」としているのは山形県独自の曲解である。
このダム建設の工事中や完成後に生じる河川の環境破壊、による生物多様性の損失、又、流域の経済的な損失、自然資本の損失をどのように考えているか。また、持続可能なまちづくりの観点で、ダムによる清流環境の破壊による、交流人口の消失、地域経済の衰退が懸念される。その消失をいかに考えるか。私たちは、この質問を、幾度も県知事、土木部長に問いかけてきたが未だに明快な回答がない。明確に、根拠を示し、答えよ。
5.県は最上川の「世界遺産登録」の運動を進めている。しかしながら、この最上小国川は最上川流域随一のダムのない清流である。蒲島郁夫熊本県知事が川辺川ダム建設白紙撤回表明の際に「ダムを造れば川のブランドイメージが落ちる」「住民は、球磨川や、川辺川の清流を守るべき宝と考えている。」として、ダム建設反対表明の決断をおこなったと聞くが、最上川支流の随一の清流にダムをつくることは、まさに最上川のブランドイメージを落とすことにつながり、県民の“守るべき宝”を消失させ、特に長期的に見た場合、持続可能な流域経済を崩壊させる結果になる。また、世界遺産登録にも重大な影響を与える。と我々は考える。知事の見解を求む。
山形県からの回答 1/11当会に 到着
1、砂礫の堆積状況の詳細および砂礫を序今日した場合の洪水時の流下量について
付近から下流区間は、狭い谷状の形状となっています。
なお、詳細な状況については、県のホームページの最上小国川ダム「最上小国川赤倉地内温泉調査報告会」における県の説明内容」に掲載している「温泉影響調査報告 PDF」の物理探査2の結果をご覧ください。
2)砂礫を除去した場合の洪水時の流下量について
現況の河川で、いまより少しでも多くの水を流すいは、河床の岩盤の上に堆積している砂礫を掘り下げて、断面を大きくする方法が考えられます。
しかし、河床の砂礫を掘り下げれば、それに伴い、河川の水位も低下することになり、今回の温泉調査で明らかになったように、温泉に影響を与えてしまいます。
そのため、温泉に影響を与えないようにするためには、河川の水位を保ったまま、砂礫を掘り下げる必要があります。この場合、可動堰などの構造物を造るためには、河床の岩盤を掘削する必要があるため温泉に著しい影響を与えることになります。
したがって、可動堰を設置したうえで砂礫を掘り下げる河床掘削は、温泉に著しい影響を与える可能性があり、困難であると考えています。
敢えて試案として、仮に河床砂礫を掘削することが可能と家庭し、試算してみると、流下量は毎秒60m3増加しますが、赤倉地点の基本高水流量だる毎秒340m3には対応できる状況にはありません。
なお、詳細な検討内容については、県のホームページの最上小国川ダム「最上小国川赤倉地内温泉調査報告会」における県の説明内容に掲載している「調査結果に基づいた河川改修の検討結果」をご覧ください。
2.再度議論する場の設置、河川整備計画のやり直しについて
最上小国川の治水対策で最大の保全対象である赤倉温泉において、「河床の掘削による河川改修を行えば温泉に影響があり困難である」こと、また「河川の拡幅により河川改修を行えば保全対象である赤倉温泉の存在が危ぶまれる」こと等が最上小国川ダムの特徴です。
このことが、河川の掘削や拡幅等により河川改修が可能な他県の河川とは事情が違っています。
なお、最上圏域河川整備計画を策定する過程においては、「最上川水系流域委員会」や「最上川水系流域委員会・最上地区小委員会」において地域特性を十分に踏まえた上で、学識経験者や地元代表者の方々に議論を重ねて頂いた結果、河川整備計画について妥当とのご意見をいただき、国土交通省の認可を得た上で策定なったものであり、やり直すことは考えておりません。
3,河川の環境破壊による生物多様性の損失、清流環境の破壊による交流人口の消失などについて
「地域の成り立ちや地形特性などを踏まえ、穴あきダムを含む河川整備により、地域の治水や環境への対応がなされることを地域住民が十分理解できるように努める」と最上川水系流域委員会の意見に基づき、学識経験者や地域代表者などからなる「最上小国川流域環境保全協議会」を今年度中に設立する予定です。
この協議会の中で「流域全体の水環境・自然環境を保全するための施策」「最上小国川流域に生息する動植物の保全対策」、「河川環境モニタリング調査の項目・実施方法・調査結果」および「工事中の濁水処理方法および処理水の水質」などについてご意見等をいただきながら、流域環境保全に十分配慮して事業を進めていきます。
この協議会の内容については、定期的に地域の方々に説明していく予定です。
また、最上小国川ダム事業を契機とした赤倉温泉地をはじめとする最上小国川流域沿岸の地域振興を図るため、持続可能な地域づくりにも取り組んでいく予定です。
4,最上川のブランドイメージ、世界遺産登録への影響について
本県が、世界遺産暫定リストへの記載資産候補として、文化庁へ提案した「最上川の文化的景観」は、最上川本川に展開した舟運による河川利用の歴史、文化的景観、庄内平野や砂防林などの農業景観、出羽三山や鳥海山に代表される祈りの景観、の3つのテーマで構成する文化資産です。
昨年9月に発表された、文化審議会世界文化遺産特別委員会の調査、審議の結果、「最上川の文化的景観」は、「稲作文化を支えた河川の流通機構と、沿川に展開した農耕文化、その結果生まれた高度な精神文化を含む総合的な資産として、価値は高い」と高く評価されたところです。
このため、今後も、この3つのテーマの観点から世界遺産暫定リストへの記載に向けた取り組みを進めていくこととしており、最上小国川ダムの整備が、直接的に、「最上川の文化的景観」の世界遺産登録に重大な影響を与えることはないものと考えています。